「医療法」及び「臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律」に関する要望書







平成11年11月19日
厚生大臣
丹 羽 雄 哉 殿



「医療法」及び「臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律」に関する要望書








東京都千代田区九段北4-1-5
市ヶ谷法曹ビル405
社団法人  日本臨床衛生検査技師会
会長  岩田 進

 平素は、当会の運営に格別のご指導を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、医療・医学の進歩により、臨床検査の重要性は年々増してきております。
 当会では以前より、臨床検査業務のあるべき姿と方向性を検討し、要望を重ねて参りました。
 今回の要望につきましては、法律制定以来、機会あるごとに要望書として提出した内容の一部を医学技術の進歩に合わせて改め、現状に即した項目に整理したものであります。
 つきましては、当該要望の具現化のために、法律の一部改正若しくは、これに準じた方策の早期実現について、特段のご高配を賜りますようお願い申し上げます。







要 望 内 容

1、医療法の条項に「臨床検査技師」の職名を明記していただきたい。

[理由]

 臨床検査技師は、これまで医療の中で重要な役割を担って、客観的で科学的データを迅速に提供している職種であります。医療現場における従事者数も医師、看護婦に次いで多く、チーム医療の一員としてその責任を果たしてきております。

 また、その業務内容は、診断・治療に著しい影響を与えることから、下記に示すように、生理学的検査の一部が業務制限となっており、院内委託の責任者、医療廃棄物処理法の施行規則にもその職名が盛られ、重要な役割を担っております。

 しかし、医療法に「臨床検査技師」名が記載されていないことから、国民に広く知られるところになっておらず、医療法上、明確な位置づけがなされておりません。

 国民は良質で信頼できる医療体制を望んでおり、臨床検査に関するインフォームドコンセントをはじめ、臨床検査技師が責任を持って業務を分担して行くために、すみやかに医療法の本文に「臨床検査技師」の職名を明記していただきたい。




<臨床検査技師の業務が明記されている関係法規>
  1. 臨床検査技師の業務は関係法令等に明記され、生理学的検査は、医師、看護婦及び臨床検査技師の制限業務である。
    (1) 生理学的検査16項目(制限業務)
    (2) 臨床検査に必要な採血(制限業務)

  2. 臨床検査技師の職名が医療法施行規則に明記されている(医師と同等)
    (1) 院内検体検査の委託業務の責任者として
    (2) 院内検体検査の受託業務責任者及び精度管理責任者として
    (3) 院内検体検査の受託業務の従事者として(無資格者と同様)
    (4) 滅菌消毒受託業務の責任者として

  3. 臨床検査技師の職名が「廃棄物処理法」の施行規則に明記されている。
    (1) 特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物)管理責任者として






2、地域医療支援病院の法的施設基準に「生理学的検査施設」及び「輸血検査施設」の設置を追加していただきたい。

[理由]

 医療法第22条の地域医療支援病院の法的施設として、「化学、細菌及び病理の検査施設」と明記されています。

 生理学的検査は、診断、治療に欠くことのできない重要な業務であり、医療の質を確保する意味からも必須の検査施設と考えます。

 輸血業務は、生命に直接かかわることから、この業務の充実は急務であり、このことは近年、輸血にかかわる医療過誤が問題となり、マスコミ等で報道されたことでも明らかであります。

 輸血検査施設を設置し、その業務を臨床検査技師が行うことは、輸血検査の質の向上を目的としたガイドラインからもみても当然と考えます。

 したがって、早急に法的施設基準の中に、生理的検査施設及び輸血検査施設を設置をしていただきたい。







3、医療法施行規則第20条第5項に生理学的検査を挿入していただきたい。

[理由]

 医用電子工学の急速な発展と技術開発により、生理学的検査領域が拡大の一途をたどっております。

 施行規則第20条第5項では「臨床検査施設とは、喀痰、血液、尿、ふん便等について臨床検査のできるものでなければならない」と既定されております。

 生理学的検査は診断・治療に寄与しており、これからの医療の質を高め、患者を守るうえからも、医療施設において心電図や超音波検査等の生理学的検査は必須の検査であり、施行規則に明記していただきたい。







4、「臨床検査技師を医療機関の規模に応じた適当数」を置いていただきたい。

[理由]

 国民に対し良質な医療を提供することが求められている現代において、医師や看護婦等と同様に、医療機関の規模に応じた臨床検査技師を配置し、チーム医療の一員として、科学的根拠に基づいた医療の充実と質の高い医療サービスの提供に向けて参加することは、国民の利益にかなうものと考えます。

 したがって、医療機関の規模に応じて臨床検査技師を適当数置くことを要望いたします。

 また、高度な医療を提供することを目的とした特定機能病院の法的人員確保も併せて要望いたします。







5、臨床検査技師の定義にある「医師の指導監督の下に」を、医師の「指示」または「依頼」にしていただきたい。

[理由]

 臨床検査技師の定義(第2条)に「医師の指導監督の下に業をする者」と規定されております。

 この用語の意義については、医発第1416号(昭和45年12月3日)によれば、法第2条の規定により「臨床・衛生検査技師の業務はすべて医師の指導監督の下に行われるものとされており、この意味は、検査業務の個々について個別的、具体的な指示を行うことでなく、一般的、包括的な業務の調整を行うことである」としております。

 現在、医療の現場では、医師の「依頼」で検査を行っているのが現状であり、医師の一般的、包括的な業務の調整を受けておらず、独立的に臨床検査業務をはじめとして、精度管理業務を行っております。

 したがって、医師の「指導監督」の用語は有名無実となっていることから、「医師の指導監督の下に」を、医師の「指示」または「依頼」にしていただきたい。







6、申請免許による衛生検査技師を廃止し、「臨床検査技師」の一本化にしていただきたい。

[理由]

 昭和45年に「衛生検査技師法」が改正され、「臨床検査技師法」が制定されました。その時点で臨床検査技師が衛生検査技師の業務を100%カバーすることから「衛生検査技師」を廃止すべきとの議論がありましたが、当時は臨床検査業務が急速に拡大している時期であったため、検査技師数の不足が懸念されるという理由からそのまま現在に至っております。

 現在では臨床検査技師数も充足しており、新卒者の就職難さえ生じております。衛生検査技師が、無試験で申請により国家資格を得ることは、資質の担保がなされていない者を国民の命を守る医療の一翼を担って働く医療関係職種の中に位置づけておくことであり、理解しがたいところであります。

 早急に検査技師の二重構造を是正する意味から、衛生検査技師を廃止していただきたい。


[参考]

 かつて、診療エックス線技師法があったにもかかわらず、新たに診療放射線技師法が創設されました。これは、医療技術の高度化に伴い、広く放射線が使用されてきたことからアルファ線、ベーター線をはじめ、広範囲にの放射線を取り扱えるように措置したものと解釈しております。その後、診療放射線技師が、診療エックス線技師の業務を100%行えることから、診療エックス線技師の必要性が薄れ、昭和58年に「行政事務の簡素合理化及び整理に関する法律」のなかで、診療エックス線技師法が廃止された経緯があります。







7、臨床検査技師の受験資格を4年制大学以上に改めていただきたい。

[理由]

 臨床検査領域における技術革新はめざましく、先端技術が次々と導入され、臨床検査技師の教育には生物、物理、化学などの基礎科目から遺伝子工学、分子生物学、電子工学、応用科学等の広い知識の習得が必要であります。

 医療現場で働く臨床検査技師には、技術の急激な発展と高度な医療に対応でき、良質な検査データを迅速に提供でき、優れた創造力と豊かな応用力を備えた資質が要求されております。このため、現行の3年制教育課程だけでは時代の要請に応えることは困難と判断されます。

 そのためには、教育年限を4年とし、臨床検査技師の受験資格を4年制大学以上に改めていただきたい。







8、生理学的検査の業務拡大と政令の規定を、項目列記方式から機能別包括方法に改めていただきたい。

[理由]

 生理学的検査は、人体に直接触れることから医療行為と判断され、臨床検査技師が行う制限業務として、昭和45年に政令により心電図検査をはじめ8項目が定められました。その後、平成5年4月に5項目、同年9月に2項目追加され、平成10年11月に1項目追加され、業務拡大がされたところであります。

 医学・医療技術の進歩発展が著しい効果を上げていることは周知の事実であり、医療の現場においては、医師の判断のもとで政令で規定されている以外の検査も導入されております。今後も医学技術の進歩により、臨床医が必要とする生理学的な検査項目が更に拡大することが予想されることから、医師が診療上必要と認め、人体への侵襲度が少ない検査機器で行われる生理学的検査で、以下に示した検査領域については、臨床検査技師がすべて行えるようにしていただきたい。

  1. 循環機能検査
  2. 呼吸機能検査
  3. 超音波検査
  4. 脳神経・筋機能検査
  5. 平衡・感覚検査
  6. 画像検査(但し放射線によらないもの)






9、解放業務となっている検体検査のうち、次の項目については改めていただきたい。

  1. 輸血(臓器移植)に関する検査
  2. 臨床微生物検査
  3. ウイルス学的検査
  4. 細胞学的検査(がん細胞、細胞分類)
  5. がん遺伝子・DNA・染色体検査
[理由]

 検体検査の結果が診断治療上の重要な指標となり、生命に直接的に作用する項目があり、不十分な精度管理によって出された検査結果による診断及び治療は、医療過誤の原因となりかねず、時には、人権問題となる可能性さえあります。すべての検体検査業務の解放性には問題があり、このまま放置しておくことは国民の公共の福祉に反するおそれがあります。

 特に輸血に関する検査は、患者の生命に直接的にかかわり、確かな医学的知識と検査技術をもって行わなければ医療過誤の原因となります。

 輸血検査は、専門的教育を受けて国家資格を有した臨床検査技師が行うことで医療への信頼を高め、良質な医療を担保することができると考えていることから、早急に無資格による解放業務を改めていただきたい。

 また、検体検査業務の解放は、検査要員の確保を容易にするための措置であったと考えられますが、新カリキュラムによる教育内容の充実や当会が行う研修事業、更には、専門学会と共同で行う認定技師制度等によって、現在業務についている検査技師も専門的技術と知識を十分持つに至っております。

 生命を測るといわれる検査を、検査の専門教育を受けた臨床検査技師の手で行うことは、医療への信頼を高め、適切な医療に資することができると考えます。





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法改正要望書 平成11年11月19日 「臨床検査技師・衛生検査技師等に関する法律」に関する要望書


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