「臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律」要望書







平成14年9月28日   



「臨床検査技師、衛生検査技師等に関する法律」要望書








東京都大田区大森北4丁目10番7号
社団法人 日本臨床衛生検査技師会
会長 岩田 進

 平素は、当会の運営に格別のご指導を賜り、厚くお礼申し上げます。
 さて、医療・医学の進歩により、臨床検査の重要性は年々増してきております。
 当会では以前より、臨床検査業務のあるべき姿と方向性を検討し、要望を重ねてまいりました。
 今回の要望につきましては、法律制定以来、機会あるごとに要望書として提出した内容の一部を医学技術の進歩に合わせて改めて、現状に即した項目に整理したものであります。
 つきましては、当該要望の具体化のために、法律の一部改正若しくは、これに準じた方策の早期実現について、特段のご高配を賜りますようお願い申し上げます。







要 望 内 容

1. 臨床検査技師の定義にある「医師の指導監督の下に」を、「医師の指導」にしていただきたい。

[理 由]
 「臨床検査技師、衛生検査技師に関する法律」の定義(第2条)に、臨床検査技師は「医師の指導監督の下に業をする者」と規定されております。

 この用語の意義については、医発第1416号(昭和45年12月3日)によれば、法第2条の規定により「臨床・衛生検査技師の業務はすべて医師の指導監督の下に行われるものとされており、この意味は、検査業務の個々について個別的、具体的な指示を行うことでなく、一般的、包括的な業務の調整を行うことである」としております。

 現在、医療の現場では、臨床検査技師は医師の「依頼」で業務を行っているのが現状であり、医師の一般的、包括的な業務の調整は受けておらず、独立的に臨床検査業務をはじめとして、精度管理業務を行っております。
 「指導監督」は従属的な意味合いが強く、今後医療専門職種としてその責任を果たしていくために「監督」の文言を削除し、医師の「指導」に改めていただきたい。






2. 申請免許による衛生検査技師を廃止していただきたい。

[理 由]
 昭和45年に「衛生検査技師法」が改正され、「臨床検査技師法」が制定されました。
その時点で臨床検査技師が衛生検査技師の業務を100%カバーすることから「衛生検査技師」を廃止すべきとの議論がありましたが、当時は臨床検査業務が急速に拡大している時期であったため、検査技師数の不足が懸念されるという理由から廃止されずそのまま現在に至っております。
 現在では、臨床検査技師数も充足しており、新卒者の就職難さえ生じております。国家資格である衛生検査技師免許が、無試験で申請のみで付与されることは、資質の担保がない者を国民の命を守る医療の一翼を担う医療関係職種の中に位置づけておくことであり、理解しがたいところであります。
 早急に検査技師の二重構造を是正する意味から、衛生検査技師を廃止していただきたいと考えます。

[参 考]
 かつて、診療エックス線技師法は、医療技術の高度化に伴い、広く放射線が使用されてきたことからアルファ線、ベーター線をはじめ、広範囲の放射線を取り扱えるようにするために、新たに診療放射線技師法が創設されました。その後、診療放射線技師が、診療エックス線技師の業務を100%カバーできることから、診療エックス線技師の必要性が薄れ、昭和58年に「行政事務の簡素合理化及び整理に関する法律」のなかで、診療エックス線技師法が廃止された経緯があります。





3. 生理学的検査は政令の規定を、項目列記方式から機能別包括方法に改めていただきたい。

[理 由]
 生理学的検査は、人体に直接触れることから医行為と判断され、臨床検査技師が行う制限業務として、昭和45年に政令により心電図検査をはじめ8項目が定められました。 
 その後、検査法の進歩や開発等により,次の如く3度にわたり項目追加が行われております。

 平成 5年 4月に5項目追加
 平成 5年 9月に2項目追加
 平成10年11月に1項目追加 (現在16項目)

 医学・医療技術の進歩発展が著しい現在、医療の現場では、医師の判断のもと政令で規定されている以外の検査も導入されております。今後も医学技術の進歩により、臨床医が必要とする生理学的な検査項目が更に拡大してくることから、医師が診療上必要と認め、人体への侵襲度が少ない検査機器で行われる生理学的検査で、以下に示した検査領域については、臨床検査技師がすべて行えるようにしていただきたい。

(1)循環機能検査
(2)呼吸機能検査
(3)超音波検査 
(4)脳神経・筋機能検査
(5)平衡・感覚検査
(6)画像検査(但し放射線によらないもの) 






4. 検体検査のうち、次の検査領域については臨床検査技師(医師を除く)の業務と規定していただきたい。
 

(1)輸血(臓器移植)に関する検査
(2)臨床微生物学的検査
(3)染色体、遺伝子関連検査
(4)細胞判定に関する検査


[理 由]
 検体検査業務は、生命を測る検査と言われており、中でも上記4領域の検査結果は診断治療上の重要な指標となり、生命に直接的に作用する項目であります。
不十分な精度管理によって出された検査結果による診断及び治療は、重大な医療過誤の原因となる可能性があります。
また、個人の人権や種の倫理に関わる問題も多いと考えます。 
 よって、臨床検査の専門教育を受けた検査技師の手で行うことは、医療への信頼を高め、適切な医療に資すると考えます。
 

(1)輸血(臓器移植)に関する検査


[理 由]
 厚生省は1989年「輸血療法の適正化に関するガイドライン」、1994年には「血液製剤保管マニュアル」を定めたが、輸血検査に従事する者の身分は規定されていません。
 しかし、相次ぐ医療過誤などの経験により、1999年「輸血療法の実施に関する指針」を発行し、この中で安全かつ適正な輸血療法は、輸血療法委員会を設置し、輸血検査の経験が豊富な臨床検査技師が24時間体制で実施することが望ましいとしています。
 実際に多くの施設で臨床検査技師が「輸血療法委員会」の中心的役割を果たし、検査技師の手によって輸血検査が遂行されているのが現状であります。
 このような背景から現行法では業務に規制のない一連の輸血検査に法規制が加わることは必須であると考えます。
 

(2)臨床微生物(ウイルス学的)検査


[理 由]
 わが国においては「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」により患者の人権を尊重しつつ感染症の予防にむけ 具体的な方針が示されています。
 厚生科学研究「新興・再興感染症研究事業:薬剤耐性菌による感染症のサーベランスシステムの構築に関する研究」等の疫学的な研究は、常に当会が組織化した臨床検査技師が担当しています。
 細菌伝染病を中心とした感染症に迅速に対応するためには、医学的知識と専門的技術を修得した臨床検査技師が行うべきで、このことは患者の人権を尊重することになります。
 

(3)がん遺伝子・DNA・染色体検査


[理 由]
 ヒトゲノム配列解読がほぼ終わり、遺伝子検査が診断・治療・予防などに広く利用されるようになってきました。
 特に、遺伝子検査が他の検体検査と大きく異なるのは、出生前診断をはじめ、患者のプライバシーが完全に保護されなければならない点など、倫理面にかかる充分な配慮が求められることが上げられます。
 したがって、診療に利用される遺伝子検査は専門知識・技術及び倫理面の教育を受け、秘守義務のある臨床検査技師の担当業務とすることが望ましいと考えます。
 

(4)細胞判定に関わる検査


[理 由]
 細胞判定は、疾患の初期に行われる尿沈渣、白血病や原因不明の貧血並びに発熱(いわゆる不明熱)が見られた際に行われる血液像検査、骨髄像検査及び癌の早期発見と予後の判定に行われる細胞診検査を含んでいます。特に細胞診検査は昭和57年に制定された老人保健法に基づくがん検診事業に必須の検査法として組み込まれ、世界にも類をみない規模で展開されてきました。わが国においては子宮がん検診にその威力を発揮し、子宮がんの早期発見に役立っています。子宮がんはごく初期の0期と呼ばれる段階で速やかに治療を開始することが出来れば、現在の医学では治癒率100%といわれています。さらに0期がんの段階で行われる治療には子宮全摘以外、つまり子宮の温存治療法も可能であるなど患者負担軽減に加え少子化対策の間接的役割を果たしているといえます。この細胞診検査は十分な経験を有する医師(細胞診指導医)および検査技師(細胞検査士)を有する専門的検査機関で行うことが望ましいとされています。このがん検診に伴う細胞診検査の発達によって、現在では病理学的診断の一翼を担うまでに至っています。これらの検査は、標本作製の工程からスクリーニングに至るまで、検査技師によって行われているのが実情であります。この細胞判定が直接診断・治療に影響することは勿論のこと、その判定が患者のQOLに大きな影響を及ぼすこともあるだけに、この検査は専門知識、技術を有した臨床検査技師が行うことが適任であると考えます。したがって、細胞判定に関する検査は「臨床検査技師が行う業務」として明記していただきたい。









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